イギリスでは、チャンセラーの赤いブリーフケースのインパクトがまだ色濃く残っており、今年のオータム・バジェットでは予想通り増税と企業への更なる負担が課されました。アメリカも、過去最長の政府機関閉鎖の余波からようやく立ち直ろうとしています。
世界中のビジネスリーダーは経済環境の先行きに不安を抱き、リストラや採用凍結の兆しに敏感になっています。
この記事をご覧になっているということは、おそらくご自身が採用凍結の決定者ではないでしょう。それでは、リクルーターや人事担当者として採用凍結にどのように対応すればよいのでしょうか?
採用凍結とは? なぜ企業は導入するのか
「採用凍結」「リクルートメント凍結」「ヘッドカウント凍結」といった言葉をよく耳にします。採用凍結とは、企業が一定期間、新規採用(外部からの追加雇用)を停止することです。
この用語の使われ方は企業ごとにやや異なり、「ヘッドカウント凍結」では「全体の人員増は不可だが、重要な退職ポストの補充は可」とする場合もあります。最初に自社、またはクライアントで「採用凍結」の意味や範囲をきちんと確認しましょう。
なぜ景気後退時に採用凍結が行われるのか?
主な理由はコスト削減です。
経済的不確実性やキャッシュフロー不足、財務状況の悪化によって、採用活動を一時的に止めざるを得なくなります。企業はこれにより支出を抑え、現金を守れるのです。
さらに、組織再編や職務・責任の見直しが必要なタイミングでも採用凍結が実施されます。予期しない外部環境の変化、グローバル危機もきっかけとなり得ます。
採用凍結はどれくらい続く? どんなタイミングで実施すべきか
採用凍結の期間は通常、数週間から数ヶ月ほど。一般的には3〜6ヶ月が多いです。 これは経済情勢や自社の財務回復のスピード、リソース再整備の状況によって左右されます。状況によっては更に延長されることも。
ただし、採用を止めても人材ニーズが消えるわけではありません。凍結が長引くと、サービス維持や優秀な人材の流出リスクが高まる点は注意が必要です。
人事はどのような場合に他のコスト削減策より採用凍結を提案すべきか
状況次第ですが、給与予算にゆとりがないときや短期的なキャッシュが枯渇しそうな時に、レイオフよりも穏やかな時間稼ぎとして採用凍結は有効です。
ただし、長期的な雇用制約が続く見通しなら、単なる採用凍結以外にもノンエッセンシャル職や契約スタッフの見直しなど、総合的なコスト最適化を検討しましょう。そうしなければ、採用再開に優秀人材が離れてしまう恐れがあります。
採用凍結発表後7日以内に人事・採用担当がやるべきこと
まずは適用範囲や期限を合意・明確化
発表前に、経営層と協力して凍結範囲を明確に固めましょう。考慮すべき主な点はこちら:
- 新規採用だけが対象か、それとも離職補充も不可か
- 部門ごとの例外や特殊事情はあるか
- 重要ポジションやミッションクリティカルな穴はどう扱うのか
- コントラクターや派遣スタッフ対応方針
加えて、「採用凍結の目的」(コスト削減・組織再編か等)や解除基準も起案・合意し、不必要な長期化を防ぎます。明確な指標があれば、解除判断や説明責任が明確になります。
人事がモニタリングすべき主な数値例:
- 離職率と離職理由の傾向
- 病気による欠勤/バーンアウトの有無
- 社内異動および昇進率
- 従業員エンゲージメントや内部調査スコア
- 重要ポジションの採用パイプラインヘルス、平均採用決定日数
このデータは、採用凍結による本当の影響や、教育的な解除タイミング判定に役立ちます。
従業員・採用責任者へのクリアなコミュニケーション
範囲や目的が固まったら、従業員・採用責任者への誠実かつ定型的な通知・説明を必ず用意しましょう。各ステークホルダーへの主な伝達ポイントを整理して、誤解を防止します。
まず社員が一番不安に思う「リストラや大規模な再編があるのか?」には真っ先に答え、現場メンバーにどこまで影響があるか正直に伝えます。もし採用凍結がレイオフ回避策なら、その点もストレートに説明しましょう。
正しい「理由」を共有すると、不安を生み出す空白期間を避けられます。「進捗の有無に関わらず定期アップデートする」ことも約束しましょう。信頼維持こそ、人事の最大の役割です。
人材ブランドとパイプライン保護の徹底
採用選考中だった候補者や求人媒体上の情報は、正確かつ即時に「採用中断」に変更します。選考中の応募者へは現状説明と誠実な共感メッセージを送りましょう。
この対応を怠れば、Glassdoorなどで悪影響が拡大することも。また、タレントパイプラインの維持に努めることで、採用再開時にトップ人材の獲得チャンスを逃さずに済みます。候補者への定期的なコンタクトや、LinkedIn・タレントプールのネットワーキング維持も大切です。
採用停止中、社員のモラルや業務負荷をどう支える?
状況を正直に伝え、モラル低下を防止
採用が止まれば、空席による業務のしわ寄せが既存社員に集中します。結果として、業務負担増や残業、キャリア停滞等の不満につながりやすくなります。
現場には「なぜ採用凍結に至ったのか」や「できるだけ解雇は避けたい」という経営方針、負担増が不可避な状況であることをオープンに共有しましょう。正直な対話が、スタッフの理解と現実的な仕事調整へつながります。
経営者やマネージャー自らが現場の苦労に寄り添う姿勢を示すことで、難局時でも士気維持に貢献できます。
思い切った優先順位見直し
課題を見極めたら、実践すべきは業務の見直しです。リーダーと連携し、優先度の低い職務やプロジェクトの凍結・延期を速やかに決断します。人数が減っている状況で同じ成果を求めない、というメッセージも明確にしましょう。
基準や品質は保ちながらも、現実的な負荷分散が不可欠。同じ作業量を維持しようとすれば、スタッフの燃え尽きにつながってしまいます。
この優先順位調整を通じ、単純な「我慢」ではない建設的な働き方変革が可能となります。
低コストでできる福利厚生・ケアの工夫
人件費に余裕がなくても、「スタッフを大切にする気持ち」は具体的アクションで伝えられます。定期1on1で業務負担や健康・ストレス状況を丁寧にヒアリングしましょう。
日々の感謝や社員同士での称賛、社内SNSでの「ありがとう」の投稿も、キャリアパスが停滞しやすい時期こそ大きな力に。 柔軟な働き方やウェルビーイングリソースの活用も可能な限り推進しましょう。小さな積み重ねが従業員満足度を高めます。
採用凍結の間に採用戦略でできること
採用プロセスの見直し・整理
新たな採用を止めているタイミングだからこそ、全求人の棚卸しや、本当に必要なミッションクリティカル職の特定が一層重要になります。既存の職務配置や採用計画を見直し、再起動時の準備を進めましょう。
同時に、求人票の内容精査・面接フローの見直し・評価軸やATSデータ整備もおすすめです。普段着手できなかった積み残しを解消するチャンスです。
ツール活用も大きな助けになります。Parseurなら履歴書解析・データ入力の自動化を通じて人手不足でも戦略的な採用判断が実現します。
Parseur:履歴書解析で採用準備を止めない
Parseurは、PDFやWord、メール添付、HTMLの履歴書を数分で構造化データへ自動変換。氏名・連絡先・学歴・職歴・スキル・住所など各種情報を抽出し、ATSや人事システムにシームレス連携できます。
初期設定も数分。Parseur専用メールボックスやAPIアップロードで、履歴書データを抽出し、必要データへのマッピングが自動で完了。
採用再開を見据えた今こそ、効率的で戦略的な準備が将来の差を生みます。
新規採用だけでなく既存人材への投資も重要
採用凍結中は既存社員のリスキリングやジョブローテーションの推進が特に有効です。これによりスキルギャップを素早く補い、「会社が社員に長期的に投資している」姿勢を強く打ち出せます。外部採用が難しい時ほど大きな意味を持ちます。
こうした動きは、将来のサクセッションプランや社内キャリア文化の強化にもつながります。「新しいポストがない今」でも将来展望が感じられれば、人材流出リスクも低減できます。
正社員雇用以外の柔軟な対応策
臨時スタッフ、コントラクター、フリーランス、エージェント等を活用すれば、急な業務負荷増にも柔軟に対応可能です。「固定の正社員枠増員はNG」でも、一時的な外部リソースの追加は多くの企業で認められています。
正社員に比べてコスト・リスクともに低く、必要な期間だけの即戦力投入に適しています。
Oriel Partnersでは、採用凍結中の臨時スタッフ活用を常時サポート。短期間の事務支援から長期プロジェクトまで幅広く手配できます。必要がなくなればすぐ人件費を元に戻せるメリットも。
次の危機に備える採用凍結プレイブックを作る
採用凍結が無事解除されたら、「もし再び同じ状況になった場合にどうするか」を振り返りましょう。上手くいった点、課題だった部分、改善方法など、率直に整理しておきます。
一つの成果例として、採用凍結・危機対応用のシンプルなプレイブック(意思決定フロー、連絡テンプレ、分担・サポート一覧など)をまとめておくと次回の対応力が格段に高まります。
大切なのは、採用凍結は永続的な状態ではなく、財務上の一時対応策という位置づけです。どれだけオープンに状況説明し、優先順位付けや従業員ケアが徹底できるかで、優秀な人材の流出防止や採用再開時の再スタートが大きく変わります。
いま必要なのは、自分がコントロールできること(候補者ネットワークの維持や現職社員の満足度向上など)に注力し、次のスタートダッシュに備えることです。
著者について

Auria Heanleyは、セントラル・ロンドン拠点のOriel Partners共同設立者。クライアントへの臨時スタッフ採用支援を含む高品質サービスに強い情熱を持つ。取引先はグローバル大手からブティック企業まで幅広く、すべてにパーソナルかつ迅速なサポートを提供している。
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