ポイントまとめ:
- OCRは画像やスキャン文書からテキストを抽出します。ドキュメント処理は、抽出したデータの「理解・整理・他システム連携」までを自動化します。
- OCRは基本的な文書のデジタル化には適していますが、本格的な自動化にはドキュメント処理が必要です。
- インテリジェント・ドキュメント処理(IDP)はAIを活用し複雑な自動化を実現します。
- 単純作業にはOCRのみ、業務効率化や拡張性にはドキュメント処理が適しています。
スキャンした文書が即座に検索可能なテキストへ変換される場面を見たことがあるでしょうか?それがOCR(光学文字認識)です。しかし、OCRはドキュメント自動化全体のごく一部の機能に過ぎません。
多くの企業はOCRのみで十分だと考えて導入しますが、実際の現場では「文書仕分け」「主要データ抽出」「各種システム連携」などの課題で限界に直面します。
そんなときに必要となるのがドキュメント処理です。
OCRとドキュメント処理の違いは一見するとわずかに思えるかもしれませんが、実は業務効率に大きく影響します。たとえば、「OCRは紙面の文字を読み取る工程、ドキュメント処理はその情報を理解・整理して効率的に使える形にする工程」と言えます。
この記事では以下の観点で両者の違いを解説します。
- OCRの特徴と限界
- ドキュメント処理の進化と可能性
- 両者の違いの詳細
- 単体OCRでは不十分になる実例と、高度な自動化が必要な場合
- ParseurのようなOCR+インテリジェント・ドキュメント処理を組み合わせた最新ソリューション事例
OCR(光学文字認識)とは?
多くの方がOCRという言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、その実際の役割は曖昧なことが多いです。まず「OCRとは何か」、ドキュメント処理との違いから説明します。
OCRをわかりやすく
OCR(光学文字認識)は、画像やPDF、スキャンした紙文書からテキストを自動で抽出する技術です。これにより視覚的な情報を機械が認識できるデータへ変換します。例えばレシートや請求書を撮影した際、内容が検出・抽出されパソコンで管理できるテキストとなります。
Security Forceによれば、高性能なOCRソフトは画像やフォント、言語によっては95%以上の認識精度になります。
ただし、「OCRは読み取ったテキストの意味や文脈までは理解できません」。抽出するのは文字列のみで、どこが日付・金額・名称なのかも判別できず、非構造的なテキストがそのまま出力されます。
具体例
例えば請求書をスキャンした場合、OCRは次のようになります。
ただテキストが取り出されただけで、文脈や項目ラベル、構造情報は付与されません。そのままでは自動化や業務フローの入力には適していません。
OCRが得意な用途
OCRは文書のデジタル化が目的の場合に適しています。本格的な情報整理や分析には向きません。
OCRだけで完結する主な利用例
古文書・印刷物のアーカイブ
古い新聞や書籍、記録類の検索性や保存性向上のためのデジタル化。
手書きメモのテキスト化
手書きメモをテキストデータに変換して活用。
スキャンPDFの全文検索対応
PDFなど画像ファイルの内容を検索可能に(細かいデータ抽出は不可)。
印刷物をテキスト化して保存
紙媒体の保管目的で基本情報を取り出したい場合。
従来型OCRの課題点
もし目標が業務自動化やデータの自動ラベリング、他システム連携であれば、OCRだけでは対応が不十分です。例えば、「Invoice No: 83901」のような記載を読み取っても、“83901”が請求書番号かどうかOCRは判別できませんし、他のシステムに値を送ることもできません。
つまり、書籍写真をテキスト化できても、重要部分を自動的に抽出・整理するには人手が必要になります。
Basecap Analyticsでも**OCR精度は約97%**とされ、多くの場合数%の誤認識が発生します。
このわずかな誤差でも業務ではデータミス・法令違反リスク・手動チェックの負担増につながるため、注意が必要です。
業務効率向上や手入力軽減を目的にOCRを導入しても、「結局人の後処理が必須で、一貫性を維持しにくい」という課題が残ります。
ドキュメント処理とは?
従来のOCRよりもはるかに発展しているのがドキュメント処理です。これは、データの取得から文脈理解、項目抽出、正確なデータ化、他システム連携まで文書全体のライフサイクルを自動管理できる総合的な仕組みです。
ドキュメント処理の主要機能には以下が含まれます。
- 多様なソースから文書取得: メール、PDF、画像、デジタルフォームなど幅広いフォーマットに対応
- 文書分類: 請求書・契約書・出荷伝票など文書種類を自動判定
- 主要データ抽出: 請求書番号・期限・金額・顧客情報など
- 構造化と検証: データ整合性や正確性を自動チェック
- 他システムへのデータ連携: CRMやExcel、ERP、各種データベースへ自動入力
このように、OCRは「画像から文字を抜き出す」だけ。ドキュメント処理は、「情報を理解・自動で分類整理・必要な情報を他システムとデータ連携」までを実現します。
Grand View Researchの調査では、インテリジェント・ドキュメント処理市場は2024年に23億ドル、2030年には123億5,000万ドルに達し、年平均成長率は33.1%と推計されています。
この成長は、企業の文書業務の自動化や最適化ニーズが急速に高まっている証拠です。
OCRとドキュメント処理の主な相違点
両者がどのようにデータや文脈・構造・連携性を扱うのか比較すると、その違いが明確になります。
特徴 | 従来型OCR | ドキュメント処理 |
---|---|---|
テキスト抽出 | 〇 | 〇(文脈ラベル付き) |
文脈理解 | × | 〇(項目ラベルや意味付与) |
構造化データ対応 | × | 〇(JSON/CSVなど) |
データ検証 | × | 〇(フォーマットやルールの自動チェック) |
多様な入力形式対応 | 一部対応 | 〇(メール・画像・スキャン・デジタル等) |
- テキスト抽出: OCRもドキュメント処理も対応だが、後者は文脈や意味を付与できる
- 文脈理解: OCRはただの文字変換、ドキュメント処理は情報を意味ごとに整理可能
- 構造化データ: OCRは未整理の生データのみ、ドキュメント処理は用途別にきちんと加工
- データ検証: ドキュメント処理は抽出内容の正確性やルール違反も自動判定
- 連携力: ドキュメント処理は他システム・業務プロセスと連携可能。OCR単体では限定的
- 入力形式の幅: ドキュメント処理は画像・メール・デジタル等、OCRよりも広範囲に対応
例えば請求書の自動処理では、OCRは全テキストを抜き出すのみですが、ドキュメント処理なら請求書番号・期日・金額等を個別に抽出・分類し、そのまま会計システムへ連携することができます。
ドキュメント処理が必要な場面とは?
OCRは画像→テキスト化には便利ですが、「内容の意味を理解できず、レイアウト変化にも脆弱、ツール連携もできません」。こうした課題を克服し、「非構造データ→用途別に整理された情報」へ自動変換するのがドキュメント処理です。
OCRだけでは不十分な例:
- 請求書の自動処理 – 請求書番号・金額・期限などの抽出や会計ツールとの連携
Mineral Treeによると、請求書OCRでは10文字に1文字が誤認識されることがあり、複数枚での精度低下が問題です。
- カスタマーオンボーディングフォーム – 紙またはスキャン申込書から氏名や連絡先等を自動で抽出しCRMへ投入
Text Magicでは、モバイルアプリのオンボーディング不備により、3日以内に75%、1ヶ月で90%のユーザーが離脱するという調査結果も出ています。正確なデータ抽出が業績にも直結します。
Verizealによれば、物流や出荷文書OCRでは最大10%の誤認識エラーも発生し得ます。
この種のミスは「請求書や伝票の記載誤り、抜け落ち」が原因です。OCRのみでは高精度な自動チェック機能がないため、追加作業や手動修正が不可欠になる場合もあります。
こうした業務で求められる主な機能:
- 意味・文脈も理解する抽出: 文字情報に加え、その意味まで自動認識(例:「$2,500」=「支払総額」)
- 多様なレイアウトへの柔軟適応: AIで書式違いにも対応
- 柔軟な外部連携: Zapier/Excel/Google Sheets/Power Automate等とカンタン連携
Parseurのような最新の自動化ソリューションは、AI OCR、高精度ドキュメント解析、ノーコード外部連携などをまとめて提供します。専門知識不要で自動化が始められます。
インテリジェント・ドキュメント処理(IDP)とは?
インテリジェント・ドキュメント処理(IDP)はOCR・ドキュメント処理の進化形で、AI(機械学習・自然言語処理)を活用したより高度な自動化です。
IDPはテキスト抽出だけに留まらず、文脈や意味理解をベースに多彩な書式にも対応、テンプレート不要で学習して運用できます。過去の訂正や修正データからモデルがさらに進化し高精度化します。
医療・金融・保険など多様な文書を扱う業界で導入が進み、手作業・エラー発生を大きく削減し、生産性や精度向上につながっています。
Scoop Marketによると、IDPは最大99.9%の精度を目指せるため、ヒューマンエラーや手動チェックが大幅に減ります。
インテリジェント・ドキュメント処理ガイドも併せてご覧ください。
OCRはツール、ドキュメント処理はシステム
OCRは画像やスキャン文書のテキスト化に欠かせない技術ですが、あくまで「文書自動化の一要素」に過ぎません。
「本格的な業務自動化やワークフロー最適化」を目的とするのであれば、ドキュメント処理やインテリジェント・ドキュメント処理(IDP)が不可欠です。これらは「テキスト抽出」以上に、「意味理解、検証、分類、自動整理」までワンストップで自動処理します。
OCRと本格的なドキュメント処理、それぞれの違いと自動化メリットをぜひご体感ください。
Parseurなら、OCRによるテキスト抽出から複雑なドキュメント解析、外部業務ツールとの連携まで、専門知識不要で誰でも始められます。
FAQ
OCRやドキュメント処理に関連するよくあるご質問と回答です。
ドキュメント処理はOCRなしでも使用できますか?
はい。もともとテキスト情報を含むPDFやWordなどのデジタル文書では、OCR処理を省略できる場合があります。画像や写真にはOCRが必要です。
OCRとインテリジェント・ドキュメント処理(IDP)の主な違いは?
OCRは文字列の抽出のみで意味や構造は扱いません。IDPはAI技術を活用し、意味の理解・自動分類・検証・精度向上まで自動処理します。
請求書処理ではOCRソフトとドキュメント処理、どちらが最適ですか?
請求書を単純にテキスト化したいだけならOCRのみで可能ですが、番号や合計・日付などの自動抽出やシステム連携が必要な場合は、ドキュメント処理ツールの導入がおすすめです。
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