キー情報抽出 (KIE) と光学文字認識 (OCR) の違いとは?
キー情報抽出(KIE)は、AIを活用して文書から意味のあるフィールドを特定・抽出する先進技術です。一方、光学文字認識(OCR)は、文字や数字などをテキスト化するだけの技術で、内容や文脈の理解は行いません。
要点まとめ
- OCRは文字をデジタルテキストに変換、KIEは文書から重要な情報を識別し構造化データに変換します。
- KIEは手作業やミスの削減、業務効率の大幅な向上、コスト削減を実現します。
- Parseurは、OCRとKIEの両方を統合し、非構造データをJSONや構造化情報へ活用できる形で出力します。
多くの方は**OCR(光学文字認識)とKIE(キー情報抽出)**を同じものと考えがちですが、両者は全く異なる役割を持っています。OCRは自動化プロセスの「始まり」にすぎません。
OCRは印刷文書や手書き文字を機械可読なテキストに変換し、検索可能なデジタルデータへと置き換えます。TDWIによれば、一般的なOCRは綺麗な文書で**98~99%**の高い正確性を持っています。しかし、どんなに正確であってもOCRには「内容を理解する力」はありません。あくまで文字の抽出だけです。
ここで活躍するのが**キー情報抽出(KIE)**です。KIEはOCRで取得したテキストから、請求額や日付、顧客名などビジネスで必要な項目を認識・抽出し、活用可能な形式に整理します。
この記事では、OCRとKIEの違い、両者の連携、KIEが文書自動化に欠かせない理由を詳しく解説します。
OCRとは?
**光学文字認識(OCR)**は、スキャンした文書や画像データから文字情報を検出し、テキストに変換する技術です。簡単に説明すると、コンピューターが紙や画像上の文字情報を「読む」仕組みです。
たとえば:
請求書をスキャンすると、OCRは次のようなテキストを生成します:
“Invoice #1234 Total $1,249.99”
荷札などをスキャンした場合も、名前や住所、追跡番号といった情報をテキスト化できます。
OCRは、紙文書をデジタル化して検索可能にする有力な手段ですが、単語の意味や文脈の把握はできません。たとえば「1234」という数字が請求書番号なのか顧客IDなのか、OCRだけでは特定できません。
OCRは自動化のスタートラインとしては有効ですが、「請求額」「期日」「発行者名」といったフィールドの抽出・分類といった高度な業務活用データにはなりません。ここでKIEの力が求められます。
キー情報抽出(KIE)とは?
キー情報抽出(KIE)は、文書から意味のある情報をAIが自動で識別し、構造化データとして抽出する技術です。OCRは生テキストを返すだけですが、KIEは自然言語処理や機械学習を使い、単語や数字の意味・文脈まで理解します。
たとえば:
請求書をOCRで読み込むとテキスト化されます:
“Invoice #1234 Total $1,249.99”
KIEなら、上記テキストから
- 請求書番号: 1234
- 合計金額: $1,249.99
のようにフィールドごと自動抽出・構造化でき、そのまま会計システムやCRM等に連携可能です。
KIEは請求書だけでなく、契約書・医療フォーム・レシート・配送伝票など、様々な書類から必要情報を抽出できます。「読む」だけでなく、「必要な項目を理解して抜き出す」点が最大の特長です。
要するに、OCRは「テキスト化」、KIEは「業務で役立つデータ抽出・構造化」を行います。
OCRとKIEの比較表
両者は文書自動化領域で混同されがちですが、本質的に役割が違います。OCRは「認識」、KIEは「理解と構造化」です。
| 特徴 | OCR | KIE |
|---|---|---|
| 主な役割 | スキャン文書・画像からテキスト認識 | 有意義な構造化フィールド抽出 |
| 出力 | 非構造化テキスト | 構造化データ(例:請求書番号・金額・日付など) |
| 知能性 | 文字認識(ルールベース) | AI/NLP/エンティティ認識 |
| 用途 | アーカイブ・検索・単純なデジタル化 | 業務自動化・データ抽出・分析連携 |
| 限界 | 意味や文脈の理解不可 | 文脈・関連性・検証も実施可能 |
まとめ: OCRは「文字を読む」まで、KIEは「文書を理解し整理」まで行います。
なぜOCRだけでは十分ではないのか
光学文字認識(OCR)は文書のデジタル化には不可欠ですが、自動化やデータ活用ではたくさんの限界があります。OCRが生成するテキストは、業務で直ちに使えるデータにはなりません。
主な課題は以下の通りです:
- 文脈判断不可: OCRは「1234」などの数値が何を意味するか判別しません。請求書番号・合計金額・郵便番号などの区別がつかないため、そのまま業務システムでは使えません。
- 手作業が発生: OCR抽出結果を業務に使う場合、手作業でのチェックやテンプレート設計が必要になります。
- 多様なレイアウトに弱い: 様式の異なる請求書・契約書・フォーム等が増えると、OCRは配置ズレや読み取り不良が増加します。
Gleematicの調査では、複雑な文書では従来型OCRが最大30%の認識エラーを生む場合もあり、ミスや再確認による手間・コスト増が問題になります。
- 拡張性に限り: 多数の書式が存在する大企業ではOCR結果の手作業修正やテンプレート追加が増え、現実的な自動化にはなりません。
このように、OCRはインテリジェント・ドキュメント・プロセッシングの「基礎」にすぎず、リアルな自動化にはキー情報抽出(KIE)が必要です。KIEはAIとNLP技術で文脈と内容を理解し、ビジネスでそのまま使える高精度データを大量・高速に生成できます。
KIEがOCRより優れている理由
OCRはデジタル化に強力ですが、ビジネス自動化や高精度なデータ活用の実現にはKIEこそ不可欠です。

MDPIの研究では、OCRだけで重要フィールドの正確な抽出ができたケースはわずか60.18%。一方でKIEなどAIを追加すれば**90.06%**に上昇し、F値では約30%も精度改善されています。
KIEの主な強み:
- 文脈理解で高精度: 機械学習やNLPによって、フィールドごとに意味を正確に認識し分類。人的エラーも減少。
- 多様なレイアウト対応: テンプレート不要で、様式や形式の違う文書でも柔軟に抽出処理。
- 手作業・時間の劇的削減: 自動抽出による入力や修正、バリデーション作業を大幅に削減。
- 業務システム連携: ERPやCRM、会計システム等にシームレス連携し、業務フローをそのまま自動化。
つまり、OCRは単なるデジタルテキストで終わりますが、KIEなら構造化され即業務で活用できるデータに変換可能なのです。これがIDP分野でKIE導入が拡大している理由です。
KIEはどのようにOCRの限界を克服するのか
OCRはただ「文字を読む」だけですが、KIEはそこに「意味と文脈」の理解を加えます。OCRで取得したテキストに対しKIEはAI・NLP処理を重ね、実用的な構造化データへと自動整理します。
KIEで解決できる主なポイント:
- 意味付与: 「1234」のような単独情報でも、その文脈から請求金額・ID・日付などを論理的に判定。
- テンプレート不要の自動抽出: 固定のルールや書式に頼ることなく、書類の違いに自律的対応。
- 多様な書類・複雑な内容に強い: 半構造・非構造な契約書や配送伝票にも対応。
- 大規模運用でもエラーが少ない: AI型抽出なら何千種類の書式でも人手レビューを最小化し運用負荷を抑えます。
- 自動バリデーション: 抽出結果の整合性や相関チェックも自動実行。
まとめると、KIEはOCRから生まれたテキストを「そのまま使える洞察」に変換し、デジタル化と実用的な自動化の橋渡しとなります。
KIEがOCRより成果を出す実例
現場業務では、KIEの効果が特に目立ちます。テキスト化しかできないOCRと違い、KIEなら「業務フローにすぐ投入できるデータ」が得られます。
- 請求書・領収書処理:KIEは仕入先名や請求書番号、合計、消費税、支払期限など会計システム向けの主要データを自動抽出します。OCRのみではテキストを再入力する必要があります。Mediumでも、KIE/LLM型抽出では抽出精度がOCR+正規表現の**88%→97%**と大幅向上しています。
- 契約書データ抽出:KIEは契約当事者・開始/終了日・契約条件・義務などを抽出し、契約内容のレビューも迅速化します。
- 医療フォーム:KIEで患者ID・保険番号・請求番号など医療情報も自動抽出され、受付や保険請求が効率化されます。
- 物流書類:船荷証券・納品書・配送伝票では荷物ID・配送先・貨物内容などもAI抽出。サプライチェーン管理の自動化が加速します。
このような現場で、OCRは単なる変換ツール止まりですが、KIEなら直接ERPやCRM、基幹システムに使えるデータが生成できるのです。
ParseurはKIEをどう実現しているか
OCRだけでは、業務自動化は不可能です。真の自動化を目指すなら、「読み取る」だけでなく、文書内容の理解・フィールド抽出・即時の構造化データ化までワンストップで実現する必要があります。Parseurはまさにこの部分で価値を発揮します。
ParseurはOCRとキー情報抽出(KIE)を組み合わせ、あらゆる非構造文書を業務で使えるJSONや構造化データに自動変換します。
Parseur利用なら、人手をほぼ介さず「活用できるきれいなデータ」を出力できます。
Parseur独自の「API+Webアプリ」モデルにより、エンジニアはAPI統合ですぐ業務連携でき、現場担当はWeb画面で解析精度やデータレビューをノーコードで簡単に管理可能です。追加のモニタリングツール開発もいりません。
ノーコードで抽出ルールやJSONスキーマも定義できて、レビューやパイプライン管理の運用性も抜群。業務と開発、どちらにも最適化した運用基盤です。
また、Parseurなら会計・CRM・ERPなど主要システムと直結し、抽出情報がすぐ本番ワークフローへ流せます。結果としてデータ連携や現場業務の自動化がスムーズに進みます。
Parseurは、高精度なキー情報抽出・カンタンな運用管理・大規模企業にも対応できる拡張性を兼ね備えた実践的なKIEソリューションです。
今後の展望:OCR+KIE+AI/LLM
文書処理の進化は急速に進んでいます。OCRでデジタル化が始まり、KIEで知能的なデータ抽出へ、そして今後は**大規模言語モデル(LLM)**によるさらなる自動化・高精度化が加速します。
この流れをおさらいすると:
- OCR=基礎:紙や画像の文書をデジタルテキスト化
- KIE=知能化:非構造な生テキストを文脈付きデータとして構造化
- LLM=次世代:KIEの自動化精度・多様性・多言語対応のさらなる進化
今後のメリット:
- さらに高精度化: フィールドごとの関係性や意図もAIが理解して、より正確で豊富なデータ供給
- 柔軟性: テンプレート不要で新しい書式や言語にも即座に対応
- 広範なカバー範囲: 手書きや業界特有書式・多言語にもスムーズに拡張
**インテリジェント・ドキュメント・プロセッシング(IDP)**全体では、OCR・KIE・AIベース分析の組み合わせがビジネスにおける競争力そのものになってきました。Fortune Business Insightsによると、IDP市場は2025年約105.7億ドルから2032年には約666.8億ドルへと大きく成長(年成長率約30.1%)が予想されています。
総括すると—— OCRが「入口」、KIEが「本格的自動化」、そしてLLM等最新AIが「未来の高度化」を担う時代が到来します。

OCRとKIEは競合ではなく、文書自動化の進化プロセスにおけるパートナーです。OCRが「何を」デジタル化するか、KIEは「なぜ」「どのように」構造化データとして活用するのか。その役割を正しく理解し、自社業務に即した最適なソリューションを選ぶことが不可欠です。
ビジネスでは、OCRだけでは生テキストしか得られませんが、KIEならそれを精度高く業務活用できるデータに進化できます。単なるデジタル化と、業務自動化・DX実現との間には、KIEの有無で大きな差が生まれます。
もしOCR以上の自動化・データ抽出を実現したいなら、Parseurのテンプレート不要型AIをぜひお試しください。請求書や契約書、その他の書類も現場ワークフローへスムーズに連携できます。
よくあるご質問
企業がドキュメント自動化を調査する際、よく出てくるキーワードに「Optical Character Recognition(OCR)」と「Key Information Extraction(KIE)」があります。どちらも知的な文書処理には欠かせませんが、それぞれ役割が異なります。違いを理解し適切なソリューションを選ぶために、OCRとKIEに関するよくあるご質問をまとめました。
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OCR は KIE と同じですか?
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いいえ。OCR(光学文字認識)は、スキャンした文書や画像を機械で読み取れるテキストに変換します。KIE(キー情報抽出)は、合計金額や日付、顧客名など、特定のフィールドを特定して構造化し、自動化に使えるデータへと整理します。
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なぜビジネス自動化において KIE の方が OCR より優れているのでしょうか?
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OCR は生のテキストしか提供せず、多くの場合、内容の確認やテンプレート作成といった手作業が必要です。KIE は AI や自然言語処理(NLP)を用い、文脈を理解して構造化データを抽出し、そのまま業務システムに連携できます。これによりミスが減り、時間も短縮されます。
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OCR と KIE を組み合わせて使えますか?
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はい。OCR が文書のデジタル化を担い、その上に KIE が必要なフィールドの抽出など知的処理を行います。両者を組み合わせることでインテリジェント・ドキュメント・プロセッシング(IDP)の基盤が構築されます。
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KIE のユースケース例を教えてください
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KIE は請求書・領収書・契約書・医療フォーム・物流書類などで使われます。合計金額・契約日・患者ID・発送番号など、OCR だけではまとめきれない構造化データを抽出します。
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OCR と比べて KIE の精度は?
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OCR はレイアウトの乱れた書類では精度が落ちますが、AI を活用した KIE は、文脈を把握しフィールドの検証もできるため、最大98%の高精度を実現します。単なるテキスト認識を大きく上回ります。
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Parseur は OCR か KIE か?
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Parseur は両者を組み合わせています。OCR でテキストを取得し、その後 AI を使った KIE で文脈豊かな構造化フィールドを抽出します。テンプレート不要のアプローチで、多様な文書タイプへ柔軟に対応し、ワークフローと連携します。
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